【キャリアを振り返る】ベルギーの実力派SSW、メラニー・デ・ビアシオ


「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン」にて2015年、2016年と続けて来日公演を行い、日本でも広く支持されているベルギー出身の女性SSW、メラニー・デ・ビアシオ。今回は、彼女のこれまでのキャリアを振り返りながら最新作『リリーズ』の制作背景などについて迫っていきたい。

まずは、彼女のプロフィールから紹介しよう。

メラニー・デ・ビアシオは、ジャズ、ブルース、ソウルなどの影響を受けるベルギー出身のシンガー。幼い頃ベルギー南部にあるシャルルロワのハーモニーアンサンブルに加わり、その後ブリュッセル王立音楽院で歌唱を学ぶ。大学卒業直後、ジャズ・パンク・グループと共に1ヶ月かけてロシアツアーを敢行し、着々と経験を積んだ後、2007年に『ア・ストマック・イズ・バーニング』でデビュー。国内外で高い評価を受ける。2014年にリリースしたセカンド・アルバム『ノー・ディール』は、2015年度「ヨーロピアン・ボーダーブレーカーズ(EBBA)賞」を受賞し、シンガーとしての地位を確固たるものとした。同年、”モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン”に出演するため来日。2016年10月にも同フェスティバルへの出演を果たしている。ここで彼女の作品を振り返って行きたい。

【ファースト・アルバム】

 なんと3日間でレコーディングされたというメラニー・デ・ビアシオのデビュー・アルバム『ア・ストマック・イズ・バーニング』(2007)。しかしデビューに至るまでの彼女の道のりは決して容易なものではなかった。デビュー前、ジャズ・パンク・グループと共にロシアをツアーしていた彼女は、ツアーの帰りに、モスクワで深刻な肺感染症にかかり、医者から1年間歌うことを禁止された。回復後、初めて彼女が行ったショーがレーベル関係者の目に止まり、それがデビューのきっかけとなった。デビュー作の発売後、メラニーはバンドとともにツアーを敢行し、そのツアーでの経験は彼女のアーティストとしての役割やアートへの理解を深めていったという。また、ライブのセットリストを、ショーの直前にその場の雰囲気や観客のリアクションを感じて組み立てるということも学んだ。

【セカンド・アルバム】

ファースト・アルバムのリリースから7年後の、2014年にリリースされたセカンド・アルバム『ノー・ディール』は、メラニー自身がプロデュースを手がけている。3年もの間制作に取り掛かり、行き詰まった彼女は、刑務所で働き始め、受刑者に声の使い方や動き、呼吸法やリズムなどを教えたという。この経験について彼女はこう語る。

「彼らに、自らの鼓動を感じて欲しかった。ー自分の体がどういう風に呼吸して、それをどのように受け止めるかを。自らの衝動に従ってもらうために。そしたら、私自身、自分の経験に対して誠実でいながら、自分に正直でなければいけないと気づいた。だから、自分がその瞬間を楽しんでいるかそうでないか、ということに集中した。これは自分にとって大きな発見だった。」

その”瞬間”に集中することの大切さを学んだというメラニー。その経験が彼女のシンガーとしてのスキルをより一層高め、その後完成したアルバム『ノー・ディール』は、2015年度「ヨーロピアン・ボーダーブレーカーズ(EBBA)賞」を受賞。レディオヘッドのフィリップ・セルウェイが自身のアルバム・オブ・ザ・イヤー1位に選出するなど、各方面で高い評価を獲得することとなった。同年には”モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン”に出演するため来日し、日本独自盤『ノー・ディール・デラックス・エディション』を発売し、日本のオーディエンスの間でも評判を呼んだ。

【大作シングル】

前作『ノー・ディール』から2年後、なんと25分にも及ぶ大作シングル『ブラックンド・シティーズ』を発表。メラニーが18歳までに過ごした事のある街、マンチェスター、デトロイト、バルバオそして地元でもあるシャルルロワなどの脱工業地域の街の風景からインスピレーションを得て制作された。メラニーの深く美しい声を紹介するかのような静寂さから始まり、感情に訴えかけるサウンドに仕上がっている。

【最新作】

 そして先月発売されたサード・アルバム『リリーズ』も、彼女のシンガーとしての創造性が色濃く反映されている。数多くのショーを受賞し、シンガーとして大きな成功を収めたメラニーであるが、今作の制作にあたっては、大きなスタジオもプロダクションもいらなかったという。

「ヒーターも、灯りもない、昼か夜かもわからないような部屋にいて、とても心地悪かったけど、とても自由だと感じた。これ以上何もいらない、必要なものは全てここにある、っていう気持ちになれたからとても嬉しかった。」

今作の中から最初にリリースされた「Gold Junkies」は、アップテンポで、彼女の息遣いを間近に感じることができる一曲だ。

そして、先月公開された「Your Freedom is the End Of Me」のMVがこちら。

男と女のエゴ、恋愛関係の輪がテーマになっているそう。

暗さと明るさが同時に存在していると本人が語る新作『リリーズ』。彼女の言う通り、今作の収録曲は「Gold Junkies」のような速いテンポの曲から、哀愁漂うダークな雰囲気の曲まで実に様々だ。そして、彼女の語りかけるような力強くエモーショナルな歌声に、思わずじっと耳を済ませてしまう人も多いだろう。ジャズファンのみならず、幅広い音楽ファンに手に取ってもらいたい1枚だ。

【アルバム情報 】
アーティスト名:Melanie De Biasio (メラニー・デ・ビアシオ)
タイトル: Lilies (リリーズ)
発売日:発売中
品番:HSE-4286
レーベル:Play It Again Sam / HOSTESS
価格:2400円+税
※初回仕様限定:ボーナストラック・ダウンロードコード付ステッカー封入(フォーマット:mp3)。歌詞対訳、ライナーノーツ  付

[トラックリスト]
1. Your Freedom Is The End Of Me
2. Gold Junkies
3. Lilies
4. Let Me Love You
5. Sitting In The Stairwell
6. Brother
7. Afro Blue
8. All My Worlds
9. And My Heart Goes On

※日本盤ダウンロード・ボーナストラック
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