【来日記念インタビュー】カナダ出身の歌姫、リディア・エインスワース!


 

 

カナダ・トロント出身のSSW/プロデューサー、リディア・エインスワース。前衛的なサウンドと、独創的なパフォーマンスはビョークやザ・ウィークエンドにも例えられ、各メディアから常に高い評価を受けている。2014年にリリースしたデビュー・アルバム『Right from Real』は、自国カナダのグラミー賞にあたるジュノー賞にノミネート。大学では映画音楽を専攻し、これまでに数多くのショートフィルムや映画『The Woods』(2011)の音楽を手掛けるなど、マルチな才能を発揮している。Pitchforkは『Right from Real』のレビューで、“彼女がほとんどなんでもできてしまうアーティストなのは明らかだ”とその才能を高く評価。

今回は、昨年6月に初来日公演を行うため日本を訪れていた彼女に行った独占インタビューを公開!昨年3月にリリースされた最新作『Darling of the Afterglow』の制作背景や、今回の来日中に撮影されたというアルバム収録曲「Open Doors」のミュージック・ビデオについてたっぷりと語ってくれた。

 

――まずはじめに、日本での滞在はいかがですか?

 

本当に魔法の様な旅。日本に来たのは今回が初めてで、予想もしなかった素晴らしい人たちや人々に出会うことができた。本当に素晴らしい時を過ごしているしまたすぐにでも戻ってきたいと思ってる。

 

――レーベルメイトであるTasseomancyと日本各地を周るツアーを終えましたが、このツアーの経緯について教えていただけますか?

 

今回のツアーはカナダの政府からの助成金を通して来たの。その機会を使って、日本には行ったことないし是非行きたい!と思って。ツアーはMOORWORKSっていうツアーマネジメントをやってる様な会社が仕切ってくれて、今回のツアーも全てセッティングしてくれたし、本当に素晴らしい人たち。日本のいろいろな違う街を見たり列車で旅をしたりするのも本当に素晴らしかった。特に岡山から高知にかけて乗った列車の旅は、車窓から川や橋や火山を眺めたりして、すごくよかった。今までにない様な経験だった。

 

――今回のツアーは全部で10箇所周られたということですが、その中でも一番思い出に残っている場所は?

 

松本はとても気に入った。あと、ちょうど昨日、三浦半島にある城ヶ島公園というところでMVを撮影したの。本当に美しかった。そこは島にある自然公園なんだけど、崖に通じる道があってそこの洞窟で撮影して。波が打ち寄せたりゴキブリみたいな変な虫がたくさんいたりして大変だった(笑)。本当に怖かったけど近付くと逃げていくし襲ったりしてこなかったから大丈夫だったんだけど。でも本当に綺麗だった。佐島のビーチも近くにあるんだけど、そこに“Nowhere but Sajima”っていうおもしろい建物があって、そこでも撮影したんだけど、そこも本当に美しかった。でも本当にどの街もそれぞれ素晴らしくて今回はあまり探索する時間がなかったからまた是非帰ってきて探索したい。松本にも今度はもう少し長く居たいと思ってる。

 

――印象に残っているライブは?

 

ひとつだけ選ぶのは難しいけど、多分松本かな。今回のツアーの最後が松本で、このツアーが終わると思ったらいろいろと思い返してしまって。ライブに来てくれた人たちもすごく入り込んでくれたし、それは本当に大きな違いを生むから。そのおかげで本当にいい雰囲気でツアーを終えることができたの。

 

――最新アルバム『Darling Of The Afterglow』についてですが、今作はLAで曲作りを始め、その後トロントで仕上げたと聞きました。土地を変えて制作を行うことが、作品に与えた影響はありますか?

 

実際の流れとしては、NYに住んでた時に曲作りを初めて、その後アイデアとかインスピレーションをツアーを回ってる時に得てその後トロントでたくさん作った、っていう感じかな。それでもうだいたい全部仕上がったと思って、他のアーティストのためにポップな曲をもっと書くためにLAに行ったの。だからその人たちと曲を作ってたんだけど、結局その書いた曲たちにすごく強い繋がりを感じて、自分から手放すことができなかった。だからLAに行った時は自分のアルバムはもう完成したと思ってたけど、新しい曲を他のアーティストのために書いていくに連れてそれらは自分のアルバムにふさわしいものなんだと気づいたの。だからそれらをトロントに持ち帰って、レコーディングとかも全てやって、トロントで完成させた。

 

土地を変えることの影響については、私はいつもとは異なる環境にいる時にインスピレーションを得やすいから、自分の心地よい場所から抜け出した方がいつもインスピレーションを受けやすいの。でもトロントの人たちと曲作りをすることも大好きだから、異なる環境でアイデアを得たあとに、それをトロントに持ち帰ってみんなと曲作りをする、っていうのが理想のシチュエーションではある。

 

――アルバムタイトルの由来について教えてください。

 

タイトルは「Afterglow」という曲からきている。その曲はLAにいた時に書いてたんだけど……歌詞もメロディも何もない曲を書いて、その時住んでたエコー・パークっていうところの近所をその曲をiPodで聞きながら歩いてたの。そのエリアには湖があって、“Lady of the Lake”という女性の像があって。それが本当に美しいの。20年代の石像で彼女は腕をあげて手をかざしてるんだけど、本当に美しくて。その像は湖の前にあるんだけど、ヤシの木がそこらじゅうにあってダウンタウンの景色も見えて紫とピンクのサンセットが空の向こうに見えたりして……先月ツアーでそこを訪れた時に同じポーズをしてその像の前で写真を撮ったんだけど。「Afterglow」を書いてる時はLAにいたんだけど、その時はLAにあまり知り合いもいなかったし滞在も終わりに差し掛かってた時だったから孤独だったし自分のルーツから離れ離れになっていたんだと思う。要するに人は皆時に孤独を感じるものだと思うの。そして自分もその時孤独を感じていて曲を聴きながらその湖の周りを歩いていた時に、その像が私に歌いかけてきて、慰めてくれたの。「Hey little love you’re the darling of the afterglow / Take what you want / Take what you need」って。それがそのまま「Afterglow」のメロディーと歌詞になっているし、その出来事がアルバムの全体のフィーリングを要約してると思う。だからその曲を聞いた誰しもが、その慰めのフィーリングを感じ取ってくれたらいいなと思ってる。

 

――前作『Right from Real』と今作とで異なっていると思うところは何ですか?

 

今回のアルバムは、ここ数年の間にライブでたくさん歌ってきたから、ミックスの中で私の声をもっと近くに感じられると思う。ファースト・アルバムをリリースした当時はあまりパフォーマンスの経験もなくて、リリース時にツアーやフェスで、これまで経験したことがないくらいのたくさんの人の前でパフォーマンスしたの。NYでファースト・アルバムを書いてた時はイースト・ブルックリンの小さなクラブで2〜5人の前で演奏してたのに、そこから一気に500人くらいを相手に演奏するようになって。それは私の歌い方も見せ方も変えた。オーディエンスともっと繋がれるようにね。あと他には、、Chris Isaacの「Wicked Game」という曲を今回カバーしてるんだけど、それはほぼアカペラでシンプルなキーボードの音と一緒に歌うの。それはどうやって自分の声を使えばいいのかすごく教えてくれたし、だから今回のアルバムでは少し成長した私の声が聴けると思う。

 

――「Afterglow」では「To play it safe is not to play at all」(無難に演奏することは演奏してないに等しい)という歌詞もありますが、常に革新的な音楽を創り出す上でどのようなところからインスピレーションを得ていますか?

 

自分のことをそんな真剣に考えすぎてもダメだし、毎日違う選択をすることもできると思うの。だからリスクを取って安全な道に頼りすぎないことも大事だと思う。特にクリエイティブな面で、自分のすることに対して常に前進して行かなきゃいけないと思うし、「まだ完璧じゃない」とか「私らしくないかも」とか思うことがあると思うけど、自分の芸術的な境界線を広げてみることも大切だと思う。私は同じことを2度したくないタイプだし、曲を作る時には常に新しいことを試みたいと思ってるから。

 

――「I Can Feel It All」は、立体視できなかった女性が立体視できるようになったという話にインスパイアされた曲だそうですが、それについて詳しく教えていただけますか?

 

もちろん!その時はツアーでスイスにいたんだけど、ツアーバスの中でイギリス出身の私のドラマーのAndyがポッドキャストをつけてたの。それでその女性がその体験について話していて。彼女は脳卒中になってしまって、立体視することを再び学ばなければいけなかった。そしてその彼女の表現の仕方がとても美しかったの。彼女は私たちが見ているような普通の感覚にはあまり戻りたくないと思っていて。彼女は自分の記憶を失ってしまったから、彼女の目に入ってくるものは全て同時に起こっていて、すごく幸せに溢れた感じでそれを説明していて。それは私たちが子供のころどのようにものを見ていたのか思い出させてくれた。違う風に物事を覚え始める前の、まっさらな状態に似ている。今の私たちのものの見方は、全てを同時に捉えられていないのかもしれない。だからその曲には全てのものを同時に受け止めるというフィーリングが入っている。

 

――MVではジャズやコンテンポラリーやモダンなど様々なダンスを披露していますが、そのようなダンスのアイデアはどのように得ていますか?

 

最近のMVは、私の妹がディレクターをしてIain Roweという振付け師と一緒にトロントで撮影したんだけど。彼は本当に素晴らしい。彼のおかげで素晴らしい作品ができあがった。彼はカナダ国立バレエ団でバレエを教えた経験があるから、バレエのバックグラウンドを持ってるの。コペンハーゲンでもバレエをやってて、そこの国立劇場で踊ってたりして、今は振付け師として活動してるの。本当に才能のある人。「The Road」のMVの時は、彼のところを訪れて、モダンなバロックダンスみたいなものがやりたいって言った。それでいて、私でもできるダンスを考えて欲しいって。私はダンサーじゃないからね。だから彼はダンサーじゃなくても覚えてできるものを考えなきゃけなかった。あまり挑戦的じゃないやつをね。あと素晴らしいダンサーたちも見つけることができた。彼らと仕事するのは大好きだし才能に溢れてるから、彼らは私の他のMVにも出てくれているの。

 

それぞれMVは毎回違って新しいことをやってるんだけど、「Afterglow」のMVは『Eyes Wide Shut』っていう映画にインスパイアされて、その場ですぐに作ったの(笑)。あと、『Stranger Things』に暗い地下みたいなシーンがあるんだけど、それと同じ照明の感じにしたくて、照明はそれにインスパイアされてる。だからIainは『Eyes Wide Shut』から着想を得てMVのフィーリングとか動きを作り出していったの。だからいろんなアイデアの合作という感じね。それに彼がうまく感情を乗せて表現してくれるの。それは私にはできないことで彼にはその才能があるから。

 

 

――「Open Doors」のMVは日本で撮影したそうですが、MVのアイデアや撮影した場所など教えていただけますか?

 

「Open Doors」は今回新しいディレクターと撮った初めてのMVなの。これまでの作品は全て私の妹とやってたから。妹も一緒に日本に来て欲しかったんだけど来れなくて……でも妹が、Xavier Lachaineっていう、ちょうど日本に引っ越した友達がいるって教えてくれて。基本的には、前一緒にMVを作った時のダンサーとか制作のチームを呼んだの。前のMVにも登場してくれたマスクとマントをかぶったダンサーたちは、今回のMVでも同じ衣装で登場してる。これは“Nowhere but Sajima”で撮った写真なんだけど、これもほんの一部。他にもいろいろあるけど、これが撮影の最後のショットだったの。今までは全て自分のコンセプトでMVを作っていたんだけど、今回はXavierのコンセプトで行ったから、私にとってそれは新しかった。彼はダンサーたちを、“自由になろうとしてる私の潜在意識”みたいな感じでビデオに登場させたくて、だから私たちお互いがバトルしてる感じで撮りたかったの。「Open Doors」は現実を新しい見方で捉えるために夢から目覚めるという曲なの。私が思うに、何か芸術でも友達でも、新しい視点を与えてくれる何かが必要な時でも、自分の殻に閉じこもってしまう人が多いと思う。「Open Doors」はそういうことについて歌っているわ。MVの振り付けは、撮影前日の夜遅くに頑張って覚えなきゃならなかったんだけど……私が今回泊まってる部屋はとても小さいんだけど、そこで振り付けを練習して壁にぶつかったりして(笑)。でもよくできたと思うし、いい出来になると思う。キキという新しい振付け師が振り付けしてくれたんだけど、今回のMVの中にも登場してくれたの。ダンスのジャンルはコンテンポラリーかな。

 

――撮影は順調に進みましたか?

 

順調だったと思う。まだ昨日撮影したばかりだからなんとも言えないし、完成したものを初めて見て、「なんでこんなことしたんだろう!?」って思うこともよくあるんだけど……でも基本的にうまく行ったと思うわ。でもたいてい演者でいるっていうのは大変なこと。長い間待たなきゃいけなかったりとか太陽の下でずっと立ってなきゃいけなかったりとか……タフじゃなきゃいけないから。私は普段はそういうタイプじゃないの。あと指示されるのもあまり好きじゃない。だけど監督がボスだから、彼らの指示に従わなきゃいけないんだけどね(笑)。

 

――大学では映画学を学んでいたそうですが、その経験が自身のプロジェクトにどのような影響を与えていますか?

 

映画音楽について学んでいたわ。ずっと歌うことが大好きだったけど、とてもシャイだったから、裏方で作曲すればいいんじゃないかと思って。だから映画のために音楽を書こうと思ってその学校に行って、高校では自分の友達のために曲を書いたりしてたの。トロントのアート・スクールに行って、そこでは弦楽四重奏のための曲とかを書いてたんだけど、徐々に映画音楽に夢中になっていったの。そこではプログラムの仕方や、コンピューターで曲を作ることについて学んだんだけど、徐々に自分の歌声を映画音楽の中に使うようになっていって、自分の歌声をレコーディングすることが大好きになってそれをいろんな形で使うようになって。そこから曲作りをするようになったの。音楽の中でもその二つは違うものだけど……例えば映画音楽だと物語とか映画の編集に頼って曲を作るし。でもプログラムの仕方とか曲を作る時に技術的に似てるところはいくつかある。他の人に曲を書いたりパソコンでプログラミングしたりした経験があるからね。でも芸術的な面で、曲作りはディレクターの指示よりも自分の芸術的なビジョンに沿って行うから、その二つは全く異なるものだと思う。

 

――自身のMVは妹さんと制作されていたり、今回のプロジェクトはリディアさんのお父さんが関わっているとお聞きしました。

 

家族は自分に一番注目してくれるし、信頼もあるから、本当に素晴らしい。でも彼らは本当に才能もあるから、一緒に働くのは本当に楽しいしたとえ血が繋がっていなかったとしても何か一緒にやってると思う。一緒に働けることを特別に感じてる。父親はミュージシャンだから、ドラムとかギターとかベースとかライブに使うもののプロデュースは全て手伝ってくれたし、スタジオで演奏する人たちを仕切ったりとか私が知らないこともその人たちに教えたりしてくれたから、父親から多くのことを学んだ。妹は、彼女とMVを作ってた時、何かを決めるのにそれをわざわざ言葉にする必要はないから、やりやすかった。彼女も映画を勉強してたの。本格的にじゃないけど、一般的な芸術分野として。でも彼女は食べ物に関連したビデオに興味を持って、『In the Weeds』っていうオンラインのショーを作ったの。食糧を探す人とシェフが、自然に入っていくの。農家では育てられない、自然でしか育たないマッシュルームとか食べられるものを探して、調理するんだけど、とても素晴らしいショーよ。

 

――今作のアートワークはノルウェーのフォトグラファー、Tonje Thilesenが手がけていますが、このコラボレーションの経緯は?

 

彼女は私の友達なんだけど、本当に素晴らしいわ。私が出ていたショーとかフェスで彼女もフォトグラファーとして参加していて。Pitchforkとか他の媒体でもたくさん活動しているの。経緯は、アリゾナのフォーム・アーコサンティ・フェスティバルというフェスにお互いいたの。そこは美しくて魔法のような場所で、自立した円形劇場を作ろうっていうビジョンを持ったユートピアのような場所なんだけど。友達がそこでフェスを毎年やってて私とTonjeは二人ともそこにいて、その時私のレーベルに、アートワークを早く完成させて欲しいと言われて。Tonjeが彼女の友達のPhillに電話してくれて彼がドレスを持って息を切らして急いで駆けつけてくれたの。何も計画できていなかったんだけど、タイトル名やアルバムのフィーリングはどんな感じになるかはわかってたから、それを元に撮影したんだけど、結果としてよく仕上がってると思う。アートワークはPaul Hodgsonという人がデザインしたんだけど、彼は本当に才能に溢れてるわ。『Life of Pi』とかマーガレット・アトウッドとかとてもアイコニックな本をたくさん手がけてる人なの。私たちは『The Cook, the Thief, His Wife & Her Lover』っていう映画の話をしていて、ピーター・グリーナウェイが監督でヘレン・ミレンが出演している映画なんだけど。彼女はジャン=ポール・ゴルチエの衣装を身にまとって、照明の感じも何もかも本当にかっこいいの。その映画のそれぞれのシーンの間に演技を示したメニューが出てくるんだけど、アートワークはその映画に出てくるメニューみたいにしたかった。

――今作のアートワークとアルバムコンセプトはどのように関係していますか?

 

この写真を撮った時アルバムのタイトルとどんなサウンドになるかっていうビジョンは明確に持ってたから、最高なことは自然に起こる場合もあると思うの。その写真を撮ったあとは色を調整したりデザインしたりいろいろと大変だったし、時間もかかった。でも本当にいい仕上がりになったと思う。

 

――また日本に戻ってくる予定はありますか?

 

戻ってこなきゃね!いつになるかわからないけど、今回の旅で本当に日本が大好きになったからまた戻ってきたい!

 

――最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

 

私の音楽を聴いてくれてありがとう!また戻ってくるのを楽しみにしているし、そのときにまた会いましょう!

———————————————————————————————————————————

【アルバム情報 】
アーティスト名:Lydia Ainsworth (リディア・エインスワース)
タイトル: Darling Of The Afterglow (ダーリン・オブ・ザ・アフターグロウ)
発売日:発売中
品番:BELLA626CD
レーベル:Bella Union / HOSTESS
価格: 輸入盤オープンプライス

[トラックリスト]
1.The Road
2. What Is It?
3. Ricochet
4. Afterglow
5. Open Doors
6. Spinning
7. Into The Blue
8. Wicked Game
9. I Can Feel It All
10. WLCM
11. Nighttime Watching