【来日直前インタビュー】アウスゲイルを構成する5枚のアルバム


アイスランドが生んだ奇跡の声、アウスゲイルがまもなく再来日。11月9日(木)に大阪・心斎橋Bigcat、11月10日(金)に東京・新木場Studio Coastにて自身最大規模となるジャパンツアーを開催します。今夏のフジロックでも、オーディエンスを大いに魅了したばかり。神々しいパフォーマンスに期待は高まるばかりでしょう。

さらに今回のツアーでは、会場内にて世界に一枚ずつしかないレコードを探す宝探し企画が行われることになりました。たったひとりのラッキーなお客さんのみがゲットできる超レアなレコードは、ファンのリクエストに応える形で楽曲を演奏し、それをレコーディングする模様を全世界生配信した“Straight to Vinyl”と名付けられたプロジェクトでプレスされたもの。今年7月にレイキャヴィークのスタジオで収録されたもので、この世に一枚ずつしか存在しない貴重なレコードを、世界中のファンがライヴ会場で探し求めているのだそう。アウスゲイルらしいロマンティックな企画ですよね!

で、この話を聞いて思ったのが、「アウスゲイルにも宝物のようなレコードはあるのかな」ということ。若くして地元の国民的ミュージシャンとなった彼は、どんな音楽を聴きながら育ってきたのか気になりませんか。そこで今回は来日直前企画として「アウスゲイルを構成する5枚のアルバム」をお届け。優美なサウンドに影響を与えた、納得しまくりの5枚について語ってもらいました。今年4月に発表されたセカンド・アルバム『Afterglow』を聴き返すうえでも発見の多い内容で、これを読めばアウスゲイルのことがもっと理解できるはず!

 

――まずはリスナーとしての原体験となったアーティストを教えてもらえますか?

「最初はロックばかり聴いていたよ。ニルヴァーナ、サウンドガーデン、メタリカ、フー・ファイターズ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジとか……」

――今の音楽性とはかけ離れた感じですね。

「うん、全然違うよね。そこから年齢を重ねていくうちに、だんだん趣味が変わっていったんだ」

――以前、ニルヴァーナの“Heart-Shaped Box”をカヴァーしていましたよね。彼らの音楽は、現在のサウンドにも影響を与えていると思いますか?

「若い頃の自分にとって重要な位置を占めていた音楽だし、そんなに目立つ形ではないにせよ、何らかの形で影響されていると思うよ。特にソングライティングについてはそう。ニルヴァーナの曲って、ただ叫んだり怒鳴ったり、ラウドなノイズを鳴らしているだけじゃないよね。本当に上手く書かれているし、フラジャイルな魅力も秘めている。そういう曲作りの仕方は、今の僕がやっていることにも通じているんじゃないかな」

――2012年に最初のアルバム『Dýrð í dauðaþögn』を作ったとき、ヒントとなった音楽はどのあたりでした?

「14歳くらいのときに、カントリーやフォークに入れ込んだ時期があって。アコースティック・ギターを手に取り、演奏スタイルやコード進行を勉強するようになったんだ。その流れでジョニー・キャッシュを知ったし、エリオット・スミスやスフィアン・スティーヴンスの虜になったよ。まあ、ほかにもいろいろ聴いていたんだけどね。

――例えば?

「ポリリズム系の音楽に、メタルもそう。トゥールやメシュガーとかね(笑)。特定のジャンルにはこだわらず、自分に語り掛けてくる音楽は何にでも耳を傾けてきた。それこそ、今回の5枚についてもね。ジェイムス・ブレイクやマウント・キンビーも11歳の頃には聴いていたし」

――今回の5枚のなかで最初に出会ったのは、きっと地元アイスランドのヒーローであるシガー・ロスの『Ágætisbyrjun』(1999)ですよね。このアルバムを初めて聴いたのは?

 

「うんと小さい頃じゃないかな……。かなり影響を受けたアルバムだし、何週間もリピートしていた時期もあったよ。それだけ何度も聴き返したアルバムには、どこか共感するところがあるんだろうね。サウンド面もそうだし、作品全体のアトモスフィアも、それまで聴いてきた音楽とはまったく異なるものだった。ほとんど別世界にいるようなフィーリングというか」

――彼らはあなたと同じく、レイキャヴィークの出身ですよね。シガー・ロスについて、〈ここがレイキャヴィークっぽい〉と思ったりする点はありますか?

「それよりは、〈アイスランド的〉というのが正確かな。ここ数年、みんなが〈アイスランド的〉と定義しているサウンドの筆頭にビョークとシガー・ロスがいて、僕や他のアイスランド人ミュージシャンもその枠に括られているんだろうね。で、大自然を感じさせたり、雰囲気を重視していたりするのが、アイスランド的サウンドに対する一般的なイメージだと思う」

――続いては、ザ・トーレスト・マン・オン・アースの『The Wild Hunt』(2010)。スウェーデンのシンガー・ソングライターで、日本では知る人ぞ知る存在だと思います。

「彼はよくボブ・ディランと比較されているよね。このアルバムは、出会った瞬間から僕のお気に入りになった。彼はとにかくソングライターとして優れているし、誰とも違うヴォーカルの持ち主でもある。叫ぶように大声で歌ったり表現力も豊かで、アコースティック・ギターを儚く無防備に弾きながら、力強く歌ってみせるんだ。でもやっぱり、一番惹かれるのは楽曲そのものの良さかな」

――このアルバムで特に好きな曲は?

「(即答で)“Love is All”。このアルバムで最初に知った曲だから。まあ、他の曲も全部好きだよ」

――ニック・ドレイクの『Pink Moon』(1972)は、今回の5枚のなかで唯一20世紀に作られたアルバムです。どのように出会ったんですか?

「えっとたしかね、最初は兄に教えてもらったはずだよ」

――もともとロックやメタルが好きだったあなたが、こういう寂寥感のあるサウンドを好むようになった経緯が気になります。

「17~18歳くらいのときだと思う。さっきも名前を出したエリオット・スミスがきっかけじゃないかな。僕はとにかく、曲がよく出来ている作品が好き。このアルバムなんて完璧にそうだね。それにギターも凄くてさ。まず第一に、僕は自分のことをギター・プレイヤーだと思っていて。だからこそ、彼の独特なプレイが気になるんだよね。チューニングもおもしろいし」

――次はボン・イヴェールの『For Emma, Forever Ago』(2007)。あなたがデビューしたときから、多く比較されてきたミュージシャンでもあります。

「このアルバムも大好きだね。この3枚(ニック・ドレイク、トーレスト~とボン・イヴェール)に共通して言えるのは、儚い美しさというかフラジャイルな魅力があること。要するに、剥き出しなんだよね」

――というと?

「(音作りの)プロダクションに隠れるんじゃなくて、耳元で歌っているようなアルバムというか。曲がいいのはもちろんとして、かけがえのない〈リアルさ〉もあると思う。そういうのって、最近のアーティストだと珍しいんじゃないかな」

――ジェイムス・ブレイクにも大きな影響を受けてきたそうですね。今回選んでもらったのは、言わずとしれた2011年のデビュー作(『James Blake』)です。

「『Afterglow』では、打ち込みのドラムだったり、エレクトロニックな要素を使いこなしているわけだけど、それ以前の僕はそういうことに興味が持てなかった。だけど、その当時からこのアルバムを聴いていたし、〈こういうこともできるんだ〉と思った。それこそ、もともと自分がやっていたアコースティックな音楽と、ジェイムスの作るエレクトリックな音楽を結びつけることができるんじゃないかって。そういうヒントを与えてくれた作品だね。もちろん、2作目や3作目も好きだよ」

――ボン・イヴェールやジェイムス・ブレイクが画期的だったことのひとつに、オートチューンの使い方がありますよね。あなたも新作で多用していましたが、声を加工することで、素の声では出せないフィーリングを表現しようとしているのでしょうか?

「それはあると思う。声を加工するということは、歌の表現についてもそうだし、曲作りそのものにも影響を与えるから。加工した声を使って、いろんなことができるようになるから」

――声質やトーンが変われば、歌声の役割も変わってくるという話ですよね。それこそ、ゴスペルっぽく聴こえるようにもなりますし。

 

「うんうん。そもそもオートチューンって、歌が苦手な人のために作られたツールなのにね(笑)。僕は自分の声にギターペダルのエフェクトをかけたりもしていて、そんなふうに声を扱えるのはおもしろいよね」

――前作と新作を対してみると、アコースティックとエレクトリックの比重が逆転している印象です。そういう変化はどこから生まれたのでしょう?

「もともと6年くらい前からエレクトロニックな音楽を掘り下げるようになって、そういう好奇心が膨らんで今に至るという感じかな。その頃から買い集めていたシンセや機材をようやく使いこなせるようになって、やっとおもしろさに気付けたのかもしれない。ポストプロダクションにも興味を持つようになったし」

――資料にはダークと書いてありましたが、個人的にはポジティヴな印象を受けました。ご自分ではどうですか?

「僕もネガティヴよりはポジティヴ、ダークよりはブライトな作品だと思う」

――そんな作品を『Afterglow』と名付けたのはなぜ?

「このアルバムの雰囲気を言い表している感じがしたんだ。歌詞のなかにも〈light〉といった言葉が出てくるし、サウンドにも合っていると思う」

――〈アウスゲイルを構成する5枚〉を挙げてもらったのと同じように、〈『Afterglow』を構成するアルバム〉を教えてください。

「そうだな……。テーム・インパラの『Currents』。ベンジャミン・クレメンタインの『At Least for Now』。それに、ディアンジェロの『Voodoo』やベックの『Morning Phase』もレコーディング中によく聴いていたよ」

 

アウスゲイルが制作したSpotifyのプレイリスト「Ásgeir’s Listening To Now」では、今回のインタヴューに登場したミュージシャン/作品の楽曲に加えて、最近のお気に入りもピックアップされています。ホセ・ゴンザレスやサンファ、アルト・ジェイといった頷ける名前から、One Little IndianのレーベルメイトであるTusks、同郷アイスランドのAxel FloventやMugison、ミューズの大名曲(!)まで、本人のサウンドとも共振するセレクトは必聴でしょう。

(取材 / 文章:小熊 俊哉 )

【来日公演詳細】

 

Hostess Club Presents Ásgeir
日程・会場:
2017年11月09日(木)大阪・心斎橋Bigcat
2017年11月10日(金)東京・新木場Studio Coast
Open 18:00 / Start 19:00

チケット一般販売中!
¥6,500(税込・1 Drink別途)

公演オフィシャルサイト
http://ynos.tv/hostessclub/schedule/20171110.html

【アウスゲイル来日公演宝探し企画詳細】

●実施日 / 会場
2017年11月09日(木)大阪・心斎橋Bigcat
2017年11月10日(金)東京・新木場Studio Coast

●実施時刻
18:00~19:00まで(レコードが見つかり次第終了となります)
●参加対象者
各会場公演チケットをお持ちの方

※注意事項

  • 企画実施中の事故や怪我、器物破損などにより発生した損害につきましては、参加されたお客様のご負担となりますので、 ご了承の上ご参加ください。
  • 会場スタッフ、他の人の迷惑になるような行動はご遠慮ください。

※ホステスSpotifyオフィシャルアカウントでは来日予習プレイリストを公開中!